山際淳司さんについて

こんにちは、deafです。

 

今週末、某局の人気バラエティー番組で高校野球を取り上げたスペシャル番組を放送するそうです。

 

“甲子園芸人”ってヤツです。

 

高校野球

 

ちょっと楽しみにしてます。

※いつか“アメフト芸人”もやってくれないかなぁって思ってます。

 

 

スポーツの見方

 

日本におけるスポーツの入り口は、例えば親父とのキャッチボールだったり、或いは学校の体育の授業だったり、または夏休みに家族とテレビで見た甲子園の高校野球だったり…

 

キャッチボール

夏のこの時期になると少しノスタルジックな気分で、スポーツとの関わりを考えたりします。

プールで泳いだのは、遊びの延長でしたからスポーツとは少し違うかもしれませんが、初めて25mプールの端から端まで足を着かず泳げたときの達成感は今でも鮮明に覚えています。

 

大人になり、スポーツとの関わりは主にファンとして観戦する側に移りました。

 

特にスタジアムでビール片手に観戦するのは格別です。
私はこのブログでもファンとしての目線で書いていきたいと考えているのです。

 

スタジアムでビール

 

まぁ、たまに解説者にでもなったかのような講釈を垂れますが、こういう困ったファンもいるってことです。

 

大阪には何千人何万人もの阪神の監督がいることでしょう、またサッカーもたくさんの人が代表監督気分で思い思いの采配を語っています。

 

スポーツにはやるものと見るものがいる訳で、見る側からやる側への敬意(リスペクト)や応援するチームや選手への深い愛情、スポーツが紡ぎ出す心動かす筋書きのないドラマを目撃する…そんなスポーツの楽しみ方としてのスポーツの見方をご紹介していければという次第です。

 

そこで今日は、選手でもない指導者でもない、スポーツ記者でも解説者評論家でもない…ファンにスポーツの持つ違う一面を見せてくれた人をご紹介します。

 

尊敬するノンフィクション作家、山際淳司さんです。

 

サンデースポーツ

 

山際淳司

 

山際淳司(wiki)

 

この人こそ、日本にスポーツライターという地位を確立させた人であったかと思います。

 

私が初めて山際淳司さんを知ったのは1994年NHKの番組「サンデースポーツ」のキャスターとしてでした。

 

見るからに元スポーツ選手ではないであろう山際さんを、私は勝手にNHKのアナウンサーだと思っていました。
しかし、アサヒビール(アサヒスーパードライ)のCMに出てるのを見て、あれ?と思ったことを覚えています。

 

 

この人、何する人?

 

この答えを、このとき真剣に調べていたら私の生き方は変わっていたかもしれません。

 

この知的で落ち着いた紳士が書いたものを私が手に取るのはずっとずっと後のことだったのです。

 

(ちなみにNHKのサンデースポーツは私に衝撃的な人物を見せつけた番組でもあるのですが、その話はまたの機会に譲ります。)

 

この番組での山際さんは現在はフリーとなっている草野満代アナウンサーとのコンビで、これまでのスポーツニュースとは違う切り口で番組を構成していたように思います。

 

山際さんを起用する前のサンデースポーツは元プロ野球選手(それも結構な大物?人気選手)をキャスターに起用していましたから、選手の目線・解説者の目線という番組の見せ方・作り方だった訳です。
ですから、キャスター自身の経験に基づく解説や、やたらと感覚的な表現が多く、それに対して山際さんの番組が取り上げる話題はより理論的であり客観的な視点でした。

 

それでいて、そこにまつわる人間ドラマを鮮明に映し出して見せたのです。

 

これは当時のNHKのスタッフの方々が優秀であったということも強調しておかねばなりませんが、そのときまだ学生だった私にはとても斬新な試みに見えたのでした。

 

しかし、そんな山際淳司さんがこの番組のキャスターを務めたのはとても短い期間でした。

 

1995年5月に番組を降板した直後、胃癌による肝不全で急逝。享年46歳でした。

 

スローカーブを、もう一球

 

 

1979年の日本シリーズ第7戦、9回裏の攻防は球史に残る名勝負でした。

 

この手に汗握る緊迫の場面を、徹底的な取材と冷静な分析力で再現してみせた『江夏の21球』は山際淳司という名前を一躍世に知らしめた作品です。

 

と、同時に日本のスポーツ・ジャーナリズムに一石を投じた画期的な作品でもあります。

 

この作品は「Sports Graphic Number」の創刊号に掲載され大変な反響を呼んだ訳ですが、現在まで続く人気雑誌「Number」の成功はここに約束されたと言ってもいいのではないでしょうか。

 

私がこの本を読んだのは発売から20年以上経た今世紀に入ってすぐのことでした。

 

正直言って知るのが遅過ぎました、学生時代に読んでいれば間違いなくその道を目指したと思います。
こういう職業があることを恥ずかしながら当時の私は知らなかったのです。

 

それまで『江夏の21球』については読んだことはありませんでしたが、その試合のことは知っていました。
当時の広島東洋カープの監督・古葉竹識氏は私の母の小学校の先輩で私の父の高校の後輩でしたから、私もクラスのほとんどが巨人ファンであったにも関わらず広島東洋カープを応援していたのです。

 

もちろん詳しいことは覚えていませんでした、後々になってテレビや雑誌などでかつての名勝負・名場面として取り上げられるのを見て、そんな感じだったのかなぁと思っていました。

 

やがて大人になり、山際淳司さんの作品に初めて触れたとき、私は衝撃的な感動を受けたのです。

 

この『江夏の21球』は現在は角川書店より出されている『スローカーブを、もう一球』の中に収録されています。

 

 

今見ても『スローカーブを、もう一球』は本当に素晴らしい一冊です。

 

冒頭の「八月のカクテル光線」からもう最高です。

 

“たったの「一球」が人生を変えてしまうことなんてありうるのだろうか。「一瞬」といいかえてもいい。
それは真夏の出来事だった。
夏でなければ起きなかったかもしれない。夏は時々、何かを狂わせてみたりするのだから。
八月一六日。晴れ。気温は30度をこえるはずだとウェザー・キャスターはいっていた。”

 

1979年夏の甲子園。全国高校野球選手権大会の3回戦、箕島対星陵の延長18回を描いた作品です。

 

 

どこまでも淡々と、どちらにも肩入れせずに語られる文章にどんどんと引き込まれます。

 

タイトル作の「スローカーブを、もう一球」も高校野球を題材とした名作です。

 

まるでテレビ中継が突然打ち切られたような唐突な終わり方は、読み手の中で試合がずっと続行していくような感覚を与えるでしょう。

 

ぜひ一度読んでいただきたい、不朽の一冊です。

 

タッチ、タッチ、ダウン

 

山際淳司さんのスポーツ関連の作品は、実はあまり多くありません。
スポーツライターの草分け的存在だと思っていた私にとって少々意外なことでもあります。

 

そんな数少ない作品の中で、山際淳司さん最後の長編作品となったのが『タッチ、タッチ、ダウン』、アメリカンフットボールに関する作品です。

 

冴えない中年男性がかつて夢見たアメフトに再び挑戦する様を描いた作品で、今の私もどこか共感を感じてしまう物語です。

 

屈強な米軍基地の男達に、無謀にも立ち向かう様は現代のドンキホーテのようでもあります。
どこか冷めた目線で、現実はそんなにカッコ良くないだろうと思いながら、でも、そんな主人公・勇二を笑えない自分がいます、まるでその場にいるかのように応援したくなってしまうのです。

 

タッチ、タッチ、ダウン (角川文庫)

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アメフトに関する作品に「12月のエンブレム」という作品もあります。
こちらは京大ギャングスターズのお話です。

 

試合中のケガで亡くなった選手とそのチームメイトが年末の甲子園ボウル制覇を目指す実話を元にした作品です。

 

こちらも、よくありがちなお涙頂戴的な単なる感動話ではなく、飽くまでもノンフィクションとして第三者の立場から語られます。

 

この引いた目線こそが山際淳司さんのスタイルで、事実をそのまま見せられるような描き方が読者の想像力を掻き立てるのです。

 

山際淳司さん以降にも、多くの優れたスポーツライターの方がいます。
しかし、山際淳司さんのようなある意味オシャレで、ある意味クールなスポーツライターを私は知りません。

 

物知り顔でスポーツエッセイを書く人は多くいますが、でもそうではないのです。

 

山際淳司さんは冷静な目線でスポーツを描きますが、その登場人物への深い愛情と尊敬の念を隠し味として練り込んでいるので、冷めた語り口でも読者を熱くするのです。

 

それこそが山際淳司さんの持つダンディズムでした。

 

私も、山際淳司さんのようにスポーツを語りたい…そう思って十数年、今こうやってブログを書いています。

 

読んでくださる人がいる限り、私が初めて山際淳司さんの本を読んだときのような感動を目標として続けていきたいと思っています。

 

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